徹底レビュー!shopify(ショッピファイ)の将来性を紐解く
この記事でわかること
- ショッピファイのビジネスモデルは?
- ショッピファイの強みは?
- ショッピファイの将来性は?
「shopify(ショッピファイ)」ってどんな会社?
アメリカのEコマース企業といえば、Amazon(アマゾン)ですよね。
ですが最近、このアマゾンを猛烈な勢いで追いかけている企業があります。
それが、今回ご紹介するEコマース企業「ショッピファイ」です。
ショッピファイは、ブランド企業がオンライン上に出店する手助けをするサービスを提供しています。
具体的には、以下の2点をやってくれます。
- オンラインショップとなるWebサイトの提供
- Webサイト上での商品売買の処理代行
自前でWebサイトを作って、決済処理の仕組みまで構築するのは大変ですから、こういったサービスはありがたいですよね。
…でも待ってください。
これ、アマゾンと何が違うのでしょうか?
ショッピファイとアマゾンの違いとは?
両者の違いをマップにしてみました。
まず、アマゾンの特徴は次の2点です。
- ブランド企業が「アマゾン」という名のショッピングモールに出店するイメージ。アマゾンのWebサイト上で、他社の製品と横並びで販売されることになる。
- 基本的に、ブランド企業が顧客との接点を直接持つことはありません。顧客とのやりとりは、アマゾンが矢面に立って行います。顧客接点のデータも、アマゾンに蓄積されます。
続いて、ショッピファイの特徴は次の2点です。
- ブランド企業が自前で店舗を持つことを前提としています。そのためのWebサイトや決済機能を、ショッピファイが提供してくれます。なので、アマゾンと違って、「ショッピファイ」というショッピングモールは存在しません。
- 顧客とのやりとりはブランド企業が行います。ブランド企業は、顧客接点のデータをいつでもショッピファイから取り寄せることができます。
例えば、このGODIVAのECサイトも、ショッピファイが使用されているそうです。
完全に「GODIVAのブランドサイト」って感じですよね。
こうやって概観すると、アマゾンとショッピファイは全く異なるサービスを提供していることがわかります。
アマゾンはB to Cサービス、ショッピファイはB to Bサービスのようにも見えます。
両者とも、見事に差別化できていますね。
収益構造はどうなっているか?
続いて、収益構造を見ていきましょう。
以下のグラフは、ショッピファイの収益の推移を示したものです。(単位は百万ドル)
- Subscription solutionsは、システムの使用料です。Webサイトという場所を借りている費用と読みかえてよいでしょう。この賃料は月額で発生します。
- Merchant solutionsは、サービスの使用料です。これは、サービスを使用した分、重量課金で発生します。例えば、決済処理の回数が増えれば増えるほど、サービス使用料も増えていきます。
実際の数値を見てみると、Merchant solutionsが大幅に増えていることがわかりますね。
コロナ禍に入ったことで、各ブランドサイトにおける販売量が増えたのが大きな要因なのでしょう。
「コロナ禍でも自社商品を安定的に販売できる有力チャネル」として、今後も欠かせない存在となっていくと考えています。
コスト構造はどうなっているか?
続いて、収益性やコスト構造を見ていきましょう。
まずはいつも通り、売上と営業利益率の推移を見てみましょう。(売上の単位は百万ドル)
2019年までは、規模を拡大しても、利益率が上がることはありませんでした。
しかし、2020年になって、ショッピファイが使用されたWebサイトでの販売量が急増したことで、一気に営業利益が黒字となりました。
今回のコロナ禍によって、オンライン上での売買が急激に世の中に浸透してきました。
その恩恵を味方につけ、一気に収益性を改善できていることがわかりますね。
では、「営業利益が黒字化した要因とコスト構造」をもう少し詳しく見てみましょう。
以下の図は、2019年と2020年の営業利益の差分を取ったものです。(単位は千ドル)
まず、売上が前年と比べて大幅に増加しているのがわかります。
また、売上原価も売上の半分近くを占めていることがわかりますね。
オンライン販売で売り上げた金額をブランドに支払っている分が、ここにあたるのでしょう。
ショッピファイは長期的に成長していくのか?
ここまでショッピファイの概要や財務データを概観してきました。
- では、そんなショッピファイは今後も長期的に成長し続けられるのでしょうか?
- 今後も長期的に成長し続けるか否か、どうやって判断すればよいのでしょうか?
実は、これらの問いに答えてくれる良書がございます。
それが『教養としての投資』です。
この本では、次に3点の問いが設定されています。
- 「本当に世の中にとって必要か?」という問いに答えられるか?
- 今更その人たちの向こうを張って勝負しようだなんて、誰も思わないほど圧倒的な競争優位を持っているか?
- 不可逆的なトレンドに支えられているか?
以下、順番に考察していきます。
「本当に世の中にとって必要か?」という問いに答えられるか?
この問いに答えるためには、まず「ショッピファイが明日から存在しなくなった世界」を想像してみましょう。
ショッピファイのようなサービスが無くなると、オンラインストアを持つことができなくなるブランド企業はたくさんいるはずです。
自社プロダクトをアマゾンのようなショッピングモールに出店するニーズ、ショッピファイなどを使って自前店舗に出店するニーズは、今後も無くなることはないでしょう。
今更その人たちの向こうを張って勝負しようだなんて、誰も思わないほど圧倒的な競争優位を持っているか?
次に、競争優位性を見てみましょう。
こちらの記事によると、2020年時点でのショッピファイのマーケットシェアは22%だそうです。
だいぶシェアは獲得できてきましたが、まだまだ「圧倒的な競争優位」を築くまでには至っていないようです。
今後ショッピファイが競争優位を作っていくためには、ざっくり言うと「早く顧客開拓を進めると同時に、乗り換え困難な状態を作ること」が鍵になります。
具体的には、次の動きが必要になるでしょう。
- 赤字覚悟でマーケティング費用を投下して、まだEコマースを導入していない企業を開拓する
- ショッピファイを導入した企業が他サービスに乗り換えられないように、ショッピファイの体験価値を上げ続ける(例えば、ショッピファイ導入企業の在庫データとも連携させるなど。そうすると、ショッピファイから他サービスに簡単に乗り換えることができなくなる)
不可逆的なトレンドに支えられているか?
最後に、長期トレンドを味方につけられるかどうかも見ておきましょう。
結論からいうと、長期トレンドに支えられているといえるでしょう。
「ショッピファイなどのECサービスのニーズが高まっていくかどうか?」
これがYesであれば、長期トレンドに支えられているといえます。
「ショッピファイなどのECサービスのニーズが高まっていくかどうか?」
この問いを解くために、さらに論点を分解すると、以下の2点に整理できます。
- 消費者となり得る人口が、今後も増加していくかどうか
- Eコマースを使用できる人数が増えるか。言い換えると、ITデバイスの普及率が上がっていくか?
すでにこの記事でも述べたように、上記の1と2のトレンドは、高い確度で実現する考えています。
このトレンドを追い風に「マーケットシェアを拡大しつつ、ショッピファイから乗り換えできない状態」をどれだけ作れるかがカギとなるでしょう。