徹底レビュー!snowflake(スノーフレーク)の将来性を紐解く
この記事でわかること
- スノーフレークのビジネスモデルは?
- スノーフレークの強みは?
- スノーフレークの将来性は?
「スノーフレーク」ってどんな会社?
スノーフレークとは、アメリカ発の「データウェアハウス」を提供する会社です。
データウェアハウスとは、いわゆる「データの倉庫」です。
なぜ今、この「データの倉庫」が注目を浴びているのか?
それは、世界中に出回るデータ量が、ものすごい勢いで増えているからです。
データ量が指数関数的に増えている
「ICTコトづくり検討会議報告書」によると、ここ20年でデータ量が「約6400倍」に増えるとのこと。
この膨大の量のデータを収納しておくための「データの倉庫」として白羽の矢が立っているのが、今回ご紹介する「スノーフレーク」です。
データウェアハウスには、あの企業が…
データウェアハウス=データの倉庫の企業は他にもあります。
実はあのAmazonも「AWS=Amazon Web Service」なるサービスを提供しています。
AWSとスノーフレーク、両者はどのように違うのでしょうか。
AWSのデータウェアハウスには弱点がある
まず、AWSは、CPUとストレージがセットになっています。
例えば、データを収納する容量を増やすために、ストレージを2つ買い足したいとき。
別にCPUは必要なく、シンプルにストレージを2つ追加したい。
なのに、CPUとストレージがセットになっている。
なので、データの容量を増やしたいときは、CPUとストレージのセットを2つ買う必要がある。
…となると、CPU2つ分を無駄に買い足す必要が出てきますよね。
スノーフレークはここが違う
一方のスノーフレークは、先ほどの図表に示した通り、CPUの層、ストレージの層を別々に構成しています。
さっきと同様に、ストレージを2つ買い足そうと思ったときは、ストレージだけを追加することができます。
別にCPUまで追加する必要がないんですね。
ここが、スノーフレークが評価されている理由の1つでもあります。
収益構造はどうなっているか?
では、肝心の収益を見ていきましょう。
以下のグラフは、2018年の4Qから、2020年の3Qまでの売上の推移を示したものです。
約4.6倍の成長を遂げていますね。
コスト構造はどうなっているか?
次に収益性やコスト構造を見ていきましょう。
まずは、営業利益率と売上の2軸で、収益性を見てみましょう。
売上の拡大とともに、利益率もどんどん上がってきていますね。
この傾向をキープできれば「売上規模を拡大すればするほど、利益率が高まっていく」という、例の勝ちパターンに突入することができます。
続いて、コスト構造も見てみましょう。
一番大きな割合を占めているのが「営業費用」です。
売上の半分以上を営業やマーケティングに投下する。
この腰が引けるような攻めの市場開拓は、データウェアハウス事業にとっては非常に重要な戦略となります。
なぜか?
データウェアハウスには、まさに「天文学的」と表現してもいいくらい、大量のデータが格納されることになりますよね。
一度、大量にデータを格納した倉庫を、別の倉庫に乗り換えようとするのは大変ですよね。
こういった「乗り換えにかかるコスト」をスイッチングコストと呼びます。
このスイッチングコストの高さを利用して、なるべく早くスノーフレークのデータウェアハウスを導入してもらうことで、「他社に乗り換えさせずにお金を落とし続けてもらう状況」を作ることができます。
スノーフレークは「儲けの仕組み」を構築できているか?
では、以上のような攻めのマーケティングは成果に結びついたのかを見ていきましょう。
成果を正しく把握するためには、サブスクリプションモデルの儲けの仕組みをおさえる必要があります。
以下の図は、「サブスクリプションモデルにおける、顧客1人あたりの儲けの構造」を示したものです。
ポイントは3つです。
①解約率を下げて、なるべく長い期間お金を落としてもらう
②顧客1人あたりの単価を上げる(オプションをつけてもらう、データ容量を増やしてもらうなど)
③顧客1人あたりにかける費用を最小化する
まだまだ拡大期なので、③の数値は良くありません。
しかし、①と②については、素晴らしい成果を出すことができています。
①売上継続率は高水準
まず、①の解約率を見てみましょう。
以下は、スノーフレークの売上継続率を示したものです。
ざっくり、解約率の逆の指標と捉えてみてください。
スノーフレークの売上継続率はおおむね150%を超える水準をキープしています。
この記事によると、アメリカのSaaS企業の中央値が約117%とのことでした。
スノーフレークの売上継続率がいかに高いかが、よくわかりますね。
②顧客1人あたりの単価も順調に増加
次に、顧客1人あたりの単価を増やせているかも見てみましょう。
以下のグラフは「1年間の売上が100万ドルを超える顧客数」の推移を示したものです。
これもすごい伸びですよね。
1年間に1億円以上支払ってくれる顧客をこれだけのペースで増やすことができている。
この指標も、スノーフレークの健康状態を示す重要なパラメーターですね。
スノーフレークは長期的に成長していくのか?
ここまでスノーフレークの概要や財務データを概観してきました。
- では、そんなスノーフレークは今後も長期的に成長し続けられるのでしょうか?
- 今後も長期的に成長し続けるか否か、どうやって判断すればよいのでしょうか?
実は、これらの問いに答えてくれる良書がございます。
それが『教養としての投資』です。
この本では、次に3点の問いが設定されています。
- 「本当に世の中にとって必要か?」という問いに答えられるか?
- 今更その人たちの向こうを張って勝負しようだなんて、誰も思わないほど圧倒的な競争優位を持っているか?
- 不可逆的なトレンドに支えられているか?
以下、順番に考察していきます。
「本当に世の中にとって必要か?」という問いに答えられるか?
この問いに答えるためには、まず「スノーフレークが明日から存在しなくなった世界」を想像してみましょう。
冒頭でも述べた通り、世界に流通するデータ量がここ20年で6400倍になっています。
今や、データを制するものが、ビジネスを制するといっても過言ではない状態です。
そんな中で、スノーフレークをはじめとした「データウェアハウス=データの倉庫」が無くなると、どうなるでしょうか?
自前でデータベースを1から作って運用していくには、天文学的なコストがかかると言われています。
必要なデータ量に応じて、最小のコストでデータを運用していくためには、データウェアハウスを提供する企業が欠かせません。
今更その人たちの向こうを張って勝負しようだなんて、誰も思わないほど圧倒的な競争優位を持っているか?
次に、スノーフレークの競争優位性を見てみましょう。
以下の図は、アメリカにおけるデータウェアハウスの市場シェア(推定)です。
まだまだ、アマゾンのAWSのシェアが一番大きいことがわかりますね。
スノーフレークも、ここ1年で、シェアを2倍近く増やしていますが、まだまだ圧倒的な競争優位を構築できているとはいえないでしょう。
今後も、この市場シェアの推移を注視しておく必要がありますね。
不可逆的なトレンドに支えられているか?
最後に、長期的なトレンドに支えられているかどうかも見ておきましょう。
結論からいうと、「データ化社会のトレンドに支えられてはいる。しかし、代替となる技術が生まれる可能性は大いにあるので安心はできない」といったところです。
第一に、すでにこの記事でも述べたように、デジタルデバイスを保有する人口は今後も増えていくはずです。
それに伴い、世界中に出回るデータの流通量もますます増えていくことでしょう。
第二に、代替技術が生まれる可能性についてです。
この点については、予測しようがありません。
おそらく、AWSの技術が発表されたときは、誰もが「画期的なデータウェアハウスだ」と考えたはずです。
しかし、その数年後には、新たなデータウェアハウス技術をスノーフレークが生み出しました。
このように、データを格納する手段については、技術動向が読みにくいのです。
ひょっとしたら、「データウェアハウス=データの倉庫に、データを格納する」という概念自体が変わるかもしれませんしね(笑)
以上2点の理由から、スノーフレークが長期的トレンドに支えられているかどうかは、不確実性が高すぎて「わからない」です。
スノーフレークを上回るデータ格納技術が生まれるのかどうか、注視しておく必要がありますね。