徹底レビュー!Plug Power(プラグ・パワー)の将来性を紐解く
この記事でわかること
- プラグ・パワーのビジネスモデルは?
- プラグ・パワーの強みは?
- プラグ・パワーの将来性は?
「プラグ・パワー」ってどんな会社?
プラグ・パワーは、アメリカの燃料電池メーカーです。
燃料電池は、水素と酸素から電気を生み出す仕組みのことです。
「水素+酸素→水+電気」という化学反応が起きるので、電気に加えて水も生まれてしまいます。
しかし、水はそのまま捨ててしまっても環境への害はないため、燃料電池は「クリーンエネルギー」として注目を浴びています。
しかもすでに大企業に採用され始めている技術なんですね。
Bloombergの記事によると、2017年時点で、世界の流通企業最大手であるアマゾンとウォルマートが、自社倉庫のフォークリフトに燃料電池の技術を採用しています。
アマゾンは10か所、ウォルマートは58か所の自社倉庫で、燃料電池の技術を使っています。
なお、採用されたのは、今回ご紹介するプラグ・パワーの燃料電池なんです。
「世界の最先端企業が見ている未来」は、いずれ我々の日常でも当たり前になるかもしれない。
そんな期待を抱きながら、プラグ・パワーの正体を解剖できればと思います。
収益構造はどうなっているか?
まずは収益から見ていきましょう。
「…ん?」と思いますよね。
私も何度も何度も財務データを見直しました。
売上がマイナス?
これがどうやら、株主にとってもネガティブサプライズだったようです。
その原因は何なのか?
色々調べてみまして、私の読み違えでなければ、ワラント(=新株予約権)の利益確定が原因とのことでした。
いったいどの企業が、どの程度の利益確定をしたのかはハッキリ明示されていませんでした。(が、何となく候補は絞られそうです…)
なので、プラグ・パワーの本来の稼ぐ力を見るためには、売上とは別の指標も見ておく必要があります。
例えば、プラグ・パワーの決算資料を見てみると、「gross billing(総取扱高)」の値が登場します。取扱高は、売上と売上に伴う経費が含まれているものです。
この取扱高を見ると、いずれのQも前年の数値を上回っています。
もちろん、今回のネガティブサプライズも事実として理解しておく必要があります。
しかし、企業価値を考えるためには、「その企業が将来生み出すキャッシュフロー」に目を向ける必要があります。
コスト構造はどうなっているか?
次にコスト構造や収益性を見ていきます。
先述の理由から、2020年は外れ値として除いています。
2005年から2019年までの売上と営業利益率をプロットしてみました。
営業利益率-750%のときよりは、だいぶ収益率が回復していますね。
しかし、まだ赤字のままです。
果たして、これは良い赤字なのか否か?
コストの内訳を見ると、燃料電池の製造にかかる費用である売上原価が高い割合を占めています。
燃料電池という高度な技術を伴う製品を低コストで生産する。
それはもう、もの凄く難易度の高いことなのでしょう。
ただし、以下を見てみると、売上総利益率は概ね改善傾向にあるといってよいでしょう。
燃料電池を低コストで生産できるようになるところまで、あと一歩のところまで来ているのかもしれませんね。
プラグ・パワーは長期的に成長していくのか?
ここまでプラグ・パワーの概要や財務データを概観してきました。
- では、そんなプラグ・パワーは今後も長期的に成長し続けられるのでしょうか?
- 今後も長期的に成長し続けるか否か、どうやって判断すればよいのでしょうか?
実は、これらの問いに答えてくれる良書がございます。
それが『教養としての投資』です。
この本では、次に3点の問いが設定されています。
- 「本当に世の中にとって必要か?」という問いに答えられるか?
- 今更その人たちの向こうを張って勝負しようだなんて、誰も思わないほど圧倒的な競争優位を持っているか?
- 不可逆的なトレンドに支えられているか?
以下、順番に考察していきます。
「本当に世の中にとって必要か?」という問いに答えられるか?
この問いに答えるためには、まず「プラグ・パワーが明日から存在しなくなった世界」を想像してみましょう。
環境への悪影響が最小化され、かつエネルギー効率が高い水素燃料電池は、今後のグリーンエネルギー社会を実現するために無くてはならない存在だと考えます。
例えば、水素燃料電池で動く車は、軽油の給油時間よりも短い時間で水素を充填することができます。
経産省の報告資料でも、水素燃料電池の効率の高さが指摘されています。
もちろん、水素燃料電池に代替する別の技術が開発される可能性もゼロではないので、エネルギー市場の動向は今後も注視しておくべきでしょう。
今更その人たちの向こうを張って勝負しようだなんて、誰も思わないほど圧倒的な競争優位を持っているか?
各企業の市場シェアを示したデータは見つからなかったが、競合は複数存在する。
パナソニック、東芝ESS、インテリジェントエネルギー、バラードパワーシステムなどである。
この中で、プラグ・パワーが有している強みは「燃料電池を製造するバリューチェーンを内製できる点」である。
電解槽の「ギナーELX」や液体水素メーカーの「ユナイテッド・ハイドロジェン」を買収したことで、燃料電池の生産を1社でやってのける力を有している。
今後、燃料電池を低いコストで安定供給できるようになり、市場シェアを奪うことができれば、圧倒的な競争優位性が築けたと評価してよいだろう。
不可逆的なトレンドに支えられているか?
「環境への悪影響を最小化できるエネルギーを使用しなければならない」
このトレンドは、今後も長期的に覆ることはないでしょう。
その意味だと、プラグ・パワーが提供している燃料電池は、長期的トレンドに下支えされているといえるでしょう。
しかし一方で、注視しなければならないのは「代替エネルギーの開発可能性」です。
今は「水素燃料電池が最強だー」となってたとしても、5年後10年後に、新しいエネルギー技術が開発されるかもしれません。
そのあたりの技術トレンドに気を付けながら、水素燃料電池の将来性を考える必要があります。
以上、プラグ・パワーを取り巻くトレンドを見てみましたが、いかがでしたでしょうか。
燃料電池に代わる画期的な技術が登場するのか、あるいは燃料電池が圧倒的な地位を確立するのか。
10年後が楽しみですね。