アメグロ-米国グロース企業研究所

外資系コンサルティングファーム出身者が、MBAの学びを活かしながら、アメリカのグロース企業を紐解きます。

徹底レビュー!Teladoc Health(テラドック・ヘルス)の将来性を紐解く

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この記事でわかること

  • テラドック・ヘルスのビジネスモデルは?
  • テラドック・ヘルスの強みは?
  • テラドック・ヘルスの将来性は?

 

「テラドック・ヘルス」ってどんな会社?

テラドック・ヘルスは、アメリカでNo.1のシェアを誇るオンライン診療サービスです。

パソコンやスマートフォンのアプリを通じて、自宅にいながらビデオチャットで診療を受けることができます。

言うまでもなく、コロナ禍を通して急激に成長した企業の代表例です。

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(引用:https://www.gettyimages.co.jp/

収益構造はどうなっているか?

収益源は大きく「契約企業からのサブスクリプションフィー」と「個人の1回あたり診療フィー」から成り立っています。

まず、実際の収益状況を見てみましょう。

以下の図表を見てもわかるとおり、「順調」以外の言葉が見つかりませんね。

  • 収益は年平均成長率70%以上
  • 会員数の年平均成長率40%以上
  • EBITDAが2019年の3倍以上
  • 営業活動によるキャッシュフローが2019年の2倍以上

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Teladoc Health Investor Presentation - January 2021(https://ir.teladochealth.com/news-and-events/events-and-presentations/default.aspx)より

上記のすさまじい成長は、多岐に渡るステークホルダーによって支えられています。

  • フォーチューン500の40%以上の企業
  • 70社以上のグローバル保険会社
  • 50以上の健康保険
  • 4000以上の病院
  • 5150万人以上の会員

…まさに、アメリカの「オンライン医療プラットフォーム」です。

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Teladoc Health HP(https://www.teladochealth.com/who-we-serve/)より筆者作成

また、アメリカのオンライン診療市場では、クロスセルのチャンスも拡がってきています。

以下の図表のとおり、2019年は「オンライン診療のプロダクトを2つ以上採用しているメンバー」の割合が9%だったのに対し、2020年には43%に急上昇しています。

このことからも、テラドック・ヘルスにとっては、オンライン診療市場は追い風ムードだといえそうです。

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Teladoc Health Investor Presentation - January 2021(https://ir.teladochealth.com/news-and-events/events-and-presentations/default.aspx)より

コスト構造はどうなっているか?

では次に、テラドックヘルスのコスト構造を見てみましょう。

営業利益率と売上の関係を見ると、以下のことがわかります。

  • 2019年までは、規模拡大とともに収益性も上げることができていた
  • 2020年は、規模拡大に伴い収益性も悪化

これは一体何を意味しているのでしょうか?

大事なのは、「成長のための赤字」なのか「業績悪化による赤字」なのかを正しく見極めることです。

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テラドックヘルス財務データ(https://ir.teladochealth.com/financial-info/sec-filings/default.aspx)より筆者作成

では、2020年の収益性が悪化した原因を、以下のグラフで見てみます。

何と売上の8割以上を「販管費」が占めています。

この販管費は、「コロナ禍に伴って会員数や提携企業・病院数を増やすために投じた費用」と捉えるのが妥当ではないでしょうか。

このようなプラットフォームビジネスは、導入期から成長期にかけては「赤字を惜しむことなく、他社が腰を抜かすような額を投じて、需要者と供給者を増やしにかかる」必要があります。

将来のキャッシュを生んでくれる顧客を増やすための投資。

それが、2020年の多額の販管費の正体ではないでしょうか。

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テラドックヘルス財務データ(https://ir.teladochealth.com/financial-info/sec-filings/default.aspx)より筆者作成

 

テラドック・ヘルスは長期的に成長していくのか?

ここまでテラドック・ヘルスの概要や財務データを概観してきました。

  • では、そんなテラドック・ヘルスは今後も長期的に成長し続けられるのでしょうか?
  • 今後も長期的に成長し続けるか否か、どうやって判断すればよいのでしょうか?

実は、これらの問いに答えてくれる良書がございます。

それが『教養としての投資』です。

この本では、次に3点の問いが設定されています。

  1. 「本当に世の中にとって必要か?」という問いに答えられるか?
  2. 今更その人たちの向こうを張って勝負しようだなんて、誰も思わないほど圧倒的な競争優位を持っているか?
  3. 不可逆的なトレンドに支えられているか?

以下、順番に考察していきます。

「本当に世の中にとって必要か?」という問いに答えられるか?

この問いに答えるためには、まず「テラドック・ヘルスが明日から存在しなくなった世界」を想像してみましょう。

おそらく、患者、保険会社、企業、病院の多くが困り果てるはずです。

コロナ禍が続く中では、言わずもがな、オンライン診療の選択肢が無い状態は致命的です。

また、コロナ禍がたとえ終わりを告げたとしても、オンライン診療の快適で効率的な診療体験は、患者と医者双方にとって欠かせない存在になっているはずです。

オンライン診療は、世の中に必要不可欠なサービスだと、私は考えます。

今更その人たちの向こうを張って勝負しようだなんて、誰も思わないほど圧倒的な競争優位を持っているか?

次に、テラドック・ヘルスくが有する競争優位を見ていきます。

まずは、テラドック・ヘルスの市場シェアを確認しましょう。

少し古いですが、2017年の資料を見ると、テラドック・ヘルスの市場シェアは75%であることがわかります。(資料には明示されていないが、おそらくアメリカ国内におけるシェア)

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Teladoc Health Investor Presentation - January 2017(https://s21.q4cdn.com/672268105/files/doc_presentations/2017/JPM-Conference-2017.Uploaded.pdf)より

また、先に述べた通り、売上の8割近い販管費を投じて、フォーチューン500の40%以上の企業や4000以上の病院をすでに顧客として囲い込んでいます。さらに会員数は5000万人を超えるプラットフォームになっています。

よっぽどテラドック・ヘルスのサービスに劣らず、かつ低価格であっても、今のテラドック・ヘルスの市場シェアを覆すには相当な時間とコストを要します。

以上より、テラドック・ヘルスの競争優位性は高いと言っていいでしょう。

不可逆的なトレンドに支えられているか?

アメリカの人口はこれからも増えていく

日本に住んでいるとイメージしづらいですが、アメリカの人口はこれからも増えていくと予想されています。

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アメリカの将来の人口推移予測(https://toukeidata.com/country/usa_jinkou.html)より
病人の数も増えていく

また、病人の数も増えていくことが予想されます。

例えば、国際糖尿病連合(IDF)の資料によると、世界の糖尿病患者数が爆増すると予想されています。北アメリカだけでも、2019年から2045年にかけて33%も増加するそうです。

病人が増えるということは、今後はより一層、医療サービスの消費額も高くなるということです。

 

以上の理由から、テラドック・ヘルスが属するヘルスケア業界は、長期トレンドによっても下支えされていると考えています。

果たして、この分析が当たっているのかどうか。

10年後に答え合わせをしましょう。